ウインターカップ2020 第73回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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REPORT 現地レポート

【現地レポート⑬】切れない集中と怒涛の追い上げで、強敵を追い詰めた県立佐世保工業

2020年12月25日

第 4 クォーターのラスト 1 分間が、なんと長く感じられたことだろう――。

大会 3 日目を迎えた「SoftBank ウインターカップ2020 令和 2 年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」。男子 2 回戦の東海大学付属諏訪 ( 長野 / 以下東海大諏訪 ) と県立佐世保工業 ( 長崎 / 以下佐世保工業 ) の一戦は、最後の 1 秒まで目の離せない大熱戦となった。

県内で圧倒的な地位を確立し、今大会に 7 年連続21回目の出場となった東海大諏訪。一方の佐世保工業は 4 年ぶり 2 回目の出場で、現役選手たちにとっては初めて経験する大舞台だ。 1 回戦で奈良育英 ( 奈良 ) を98−87で下してうれしい全国初勝利を挙げ、迎えた 2 回戦では強敵相手にチャレンジャーとして向かっていった。

試合は序盤からきっ抗したものの、第4 クォーター残り 7 分、71−61と10点リードに成功したのは東海大諏訪だった。しかし「残り 7 分あったら縮められると、みんなで声をかけ合って 1 本ずつ攻撃を作っていきました」と佐世保工業のキャプテン#4 馬場 晃。堅いディフェンスと#5 松山 泰智の得点で追い上げ逆転すると、残り 1 分半にはリードを 5 点にまで広げた。

それでも、ここからさらなるドラマが待っていた。追いかける東海大諏訪は、#8 仁藤 優貴が 3 ポイントシュートを決めてチームを勢い付け、残り 1 分には#7 百目木 翔馬のドライブで82−82の同点に。そこからは互いに一歩も譲らず、佐世保工業#5 松山がフローターと速攻を決めれば、東海大諏訪も#8 仁藤がラインのはるか後ろから 3 ポイントシュートを沈め、さらに#18大内 歩夢がバスケットカウントを獲得する。残り 10.2 秒、佐世保工業# 4 馬場がフリースローを 2 本決めて88−88の同点に戻し、試合はこのまま延長戦にもつれるかと思われた。

 

だが、この試合のヒーローになったのは東海大諏訪 #8 仁藤だ。 3 ポイントシュートはリングに弾かれたものの、自らリバウンドに飛び込みそのボールを空中で取ってそのままシュート。これがブザービーターでバスケットカウントとなり、91−88で勝負あり。互いの意地と意地とがぶつかり合った白熱の一戦は、劇的なシュートで幕を閉じた。

手中から惜しくもこぼれ落ちた全国 2 勝目に、佐世保工業の選手たちは涙を流してうなだれた。だが、点差を離されても切れない集中と粘り強い追い上げで、強敵を最後まで苦しめたことは間違いない。「今大会に出るためにサポートしてくださった保護者や先生方に、感謝の気持ちを持って戦いました」と #4 馬場。その思いは、全身全霊をかけたプレーにまさに表れていたと言えるだろう。

試合後、水戸 義久コーチは「子どもたちは私が言ったことを忠実に頑張り抜いてくれたと思います。だから(敗因は)私自身」と反省の弁。そして「インターハイがなくなり、これが最初で最後の力試しと考えれば、本当によく頑張ったと思います。最後まで戦い抜いてくれて、子どもたちには頭が下がる」と選手たちを手放しでたたえた。

初出場を果たした 4 年前の先輩たちを超える全国初勝利の喜びも、あと一歩のところで敗れる悔しさも、両方を味わった今大会。今年の 3 年生について「みんなで声をかけ合いながら、一塊に団結できた代。後輩のお手本になるような子たちでした」と水戸コーチは評する。来年以降は現 3 年生から多くの学びを得てきた後輩たちが、先輩たちの無念も背負い、さらなる高みを目指していくだろう。

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