【現地レポート②】仲間と危機を乗り越えてきたからこそ、あふれた悔し涙
2020年12月23日
「SoftBank ウインターカップ2020 令和 2 年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」が本日23日、いよいよ開幕を迎えた。そのオープニングゲーム、女子 1 回戦で東京体育館の C コートに立ったのは、東北新人大会優勝の郡山商業 ( 福島 ) と、近畿新人ベスト 4 の大阪桐蔭 ( 大阪 ) だ。
試合は流れの奪い合いとなった。序盤は確率良くスリーポイントシュートを決めた大阪桐蔭がリードしたが、大会前から「ゾーン対策は練習してきた」 (松本理コーチ) という郡山商業も落ち着いてパスを回し、飛び込みリバウンドからのセカンドチャンスでも得点を重ねて逆転に成功。37-26と郡山商業の11点リードで前半を終える。
だが、大阪桐蔭もチームの柱である #7 大﨑 莉瑚選手、#5 松川 侑里香選手らの得点で追い上げ、試合は接戦に。第 4 クォーター残り 5 分の時点で同点と、どちらに流れが転ぶか全く分からない状況だったが、ここで抜け出したのは巧みなゾーンディフェンスが機能した大阪桐蔭。攻めては #9 寺岡 美祈選手のシュートなどで引き離し、79-69で試合終了となった。
集合写真を撮ったあと、泣き崩れて前に進めずチームメイトから肩を支えられていたのが郡山商業のエース・#7 円谷 愛加選手だ。173㎝の長身オールラウンダーとして縦横無尽にコートを動き回り、スリーポイントシュート 3 本を含む29得点、12リバウンドの活躍。それでも「力を全部は出し切れませんでした。何よりチームを勝たせられなかったので…」と、円谷選手の目からは大粒の涙が止めどなく流れた。
2 月に東北新人大会で優勝した郡山商業だが、実は夏からチームのオフェンスの形を大きく変えざるを得なかった。というのも今年 7 月、下級生の頃からエースとして活躍していた須釜 心選手が、膝のケガで戦線離脱。チームにとっては得点源の一人を失う形となったのだ。
ただ、この緊急事態に「今までは私と 2 人で点を取ってきたのですが、( 須釜選手が ) 抜けてからは『自分がしっかりしなければ』と思って今まで取り組んできました」と、円谷選手は目の色を変えてこの半年間チームを引っ張ってきた。また、そんな円谷選手の負担を軽減しようと、「それぞれに積極性が出るようになりました」と松本コーチ。司令塔の #4 佐藤 杏莉選手や 2 年生の # 16菅野 楓夏選手らも果敢にシュートを狙うようになり、相手にとっては的を絞らせないチームに変貌を遂げた。
アクシデントをチームで乗り越え、自信を持って臨んだ大会だったからこそ、接戦を勝ち切れなかったことが悔やまれた。それでもこの 1 年間、下級生も含めて貴重な経験を積んできたことは確か。円谷選手は「もう負けて悔しい思いはしたくないので、もっと練習を頑張りたいです。後輩たちには来年、『郡商は強い』というのを全国で見せられるようにしてほしい」と、涙をぬぐって先を見据えていた。