【現地レポート⑫】昭和学院に届いた最高のクリスマスプレゼント
2020年12月25日
「SoftBank ウインターカップ2020 令和2年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」は、早いもので大会3日目を迎えている。
各都道府県から精鋭が集い、たった一つの頂点を競う高校バスケ 冬の風物詩。それがウインターカップであり、その中では毎年数々の名勝負が繰り広げられてきた。今大会の女子3回戦、昭和学院 (千葉) 対岐阜女子 (岐阜) もまた、歴史の1ページに加わることとなるだろう。
今年の昭和学院を率いる 3 年生たちは 2 年前のウインターカップ準々決勝で桜花学園 (愛知) を破り、最終的に全国 3 位に輝いた経験を知るメンバーだ。
大会前の取材でキャプテンの#4三田七南から何度、「日本一」という言葉を聞いたことだろうか。山の頂が拝める目前まで勝ち進んだからこそ、今年の 3 年生は特に日本一へのこだわりが強い。
そのために倒さねばならない強敵が3回戦で対戦した岐阜女子。「(2 年前に桜花学園に勝ったときのような試合を) 自分たちの代でもう一度やりたいなというのは強く思っていたことです。私はまだ1年生でしたが試合に出ていましたし、そのときは 3 位だったので今年は絶対に日本一をかなえられえるように」と三田。
彼女にとっても、チームにとっても頂点を目指す上で大きな山場となった一戦は序盤、気合が空回りしてしまったのか、昭和学院がファウルトラブルに陥った。三田が試合開始早々に 2 ファウルでベンチに下がると、岐阜女子の留学生イベ・エスター・チカンソにインサイドを制圧され、第 3 クォーター途中には一時16点の差を付けられる苦しい展開。
これ以上離されればワンサイドゲームになっていただろう。しかし、「第 4 クォーターまで 2、3 年生が巻き返せる点差まで我慢してくれました」という三田の言葉どおり、昭和学院は#8花島百香、#9田嶋優希奈、#6西ファトゥマ七南の 2 年生トリオが力強いプレーで食らい付くと、下級生の勢いに触発された森長海羽 (3 年生) もインサイドで奮闘。苦しい場面で持ちこたえられたことが、反撃の糸口となる。
昭和学院の粘り強いプレーとは対照的に、点差を離しきれない岐阜女子の選手たちからはいつしか積極性が薄れ、「早く楽になりたい」(岐阜女子・安江コーチ) という焦りが生まれていった。
じわりじわりと流れが昭和学院に傾く中、コートに戻った三田も「消極的にならずに強い気持ちでプレー」できたことで持ち味の力強さが戻り、第 4 クォーターだけで10得点を集中。試合時間残り 1 分45秒には勝ち越しのフリースローを沈め、自らの手でチームにこの試合初めてのリードをもたらした。昭和学院にとっては最高の、岐阜女子にとっては最悪の場面でひっくり返ったスコアはそれから二度と覆ることはなかった。
70対67。この試合の最終スコアだ。
三田のファウルトラブルが痛手であったことは言うまでもないが、エース不在によって残された選手たちが苦しい状況を何とか乗り越えようと奮闘したことが、岐阜女子の焦りを生み、それが「不用意なファウルをして、イージーシュートを落として自分たちから崩れていった」(岐阜女子・#4佐藤果歩) という終盤の戦いにつながっていった。
困難を乗り越えた末につかんだ会心の勝利には三田も「めっちゃうれしいです!」と、マスクからあふれんばかりの笑顔で答えてくれた。今日は12月25日。昭和学院に、最高のクリスマスプレゼントが届いた。