【現地レポート⑲】高い壁に真っ向から挑んだ“小兵”たちの準決勝
2020年12月27日
今年も桜花学園 (東海ブロック推薦 / 愛知) が強い――。そんな下馬評は、聞かなくても十分にわかっている。新型コロナウイルスの感染拡大が一段落し、各チームの活動が再開した後に練習試合をしているからだ。そのときは「ボコボコに圧倒された」と高知中央 (高知) のキャプテン、井上ひかるは言う。しかしその経験が彼女たちに火をつけた――。
「SoftBank ウインターカップ2020 令和 2 年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子準決勝、初のベスト 4 進出となった高知中央は桜花学園と対戦し、64-84で敗れた。しかし彼女たちは立ちはだかる “女王” の前に臆することなく、最後まで真っ向から立ち向かった。
井上には圧倒された練習試合で気づいたことがあったと言う。
「桜花学園はルーズボールやリバウンドなどボールへの執着心が強くて、そこが自分たちには欠けているんじゃないか」
チームメイトとそんな話をして、それから今日まで「ルーズボールを追いかける」ことをテーマにしてきた。それが突き放したい桜花学園に対して、しっかり食らいつけた要因のひとつだろう。
もうひとつはメンタル面の成長。これも桜花学園との練習試合を通じて成長できたと井上は認める。
「桜花学園は昨年の王者だし、みなさん、桜花学園が勝つと思っていたと思うんですけど、そのなかで自分たちもできるんだぞというのを見せたかったし、桜花学園に勝って優勝したかったので、みんなの気持ちが強くなって、立ち向かえたのかなと思います」
“女王” の強さを知ってなお、彼女たちはそれを乗り越えようと戦い続けたのである。
創部16年目。吉岡利博コーチが就任して 2 年目。チームとしてもまだまだ若い。それでもウインターカップでベスト 4 まで進出できたのは、ひとつに人間性の成長があると井上は言う。
「それまではチームもぐちゃぐちゃで、人間性もよくなかったのかもしれません。でも吉岡コーチはは、ちょっとしたこと……たとえばスリッパを並べるとか、椅子をしまうとか、細かいところまでずっと熱心に指導してくださって、相手に感謝することを含めて、いろんなことを学びました」
桜花学園の胸を借りたことでチームがステップアップしたことを考えれば、悔しさは残るが彼女たちにも感謝するところだ。
それ以上に彼女たちを強くしたのは、彼女たち自身が持つ強いハートだった。
「私たちは、2 人の留学生以外、身長が低くて、あまり勝てるチームじゃないと思われていたと思うんです。でも小さいからこそスピードもあるし、小さいからこそできることもたくさんあるので、その『小さいからこそ』が高知中央の強みかなと思いました」
“女王” の壁は高かったが、高知の “小兵” たちは気持ちで負けなかった。引かなかった。最後まで真っ向勝を挑み続けた姿はきっと、後輩のみならず、全国のバスケファンにも響いたはずである。