ウインターカップ2020 第73回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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REPORT 現地レポート

【現地レポート㉕】3 試合連続の逆転勝利に導いたキャプテンの不屈

2020年12月29日

 意外なことに全国大会では初の対戦だったという。初顔合わせを制したのはウインターカップの優勝経験を持つ仙台大学附属明成(東北ブロック推薦・宮城)。3 年ぶり 6 回目の冬の “戴冠” である。

「SoftBank ウインターカップ2020 令和 2 年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子決勝、仙台大学附属明成は、大会屈指のポイントガード、米須玲音を擁する東山 (京都) と対戦。第 4 クォーターで逆転に成功すると、2 度追いつかれるのだが、残り 5秒、2 年生エースの山﨑一渉が決勝のシュートを決め、72-70で勝利をあげた。

 仙台大学附属明成を率いる佐藤久夫コーチは第 3 クォーターの序盤から中盤にかけて、17点のビハインドを背負ったあたりで「少しあきらめかけた」と認める。インサイドのアタックでも、3 ポイントシュートでも、思ったようにシュートが決まらず、リバウンドまで制され、打つ手が見えなかったのかもしれない。しかし同じとき、同じベンチにいながら、あきらめていなかった人物がいる。キャプテンの浅原紳介である。
「点差が離れたところでも、自分としてはなんとしても日本一を取りたいという気持ちを持っていました。実際、点差が離れてから追いつく練習もしてきていたので、その初心に返って、コートに出ている 5 人も、ベンチプレーヤーも、それを意識すれば必ず勝てると思っていました」
 今大会は新型コロナウィルスの影響でベンチに座っている選手もマスクを着用しなければいけない。声援を送るのも難しい中にあっても、浅原はキャプテンとしてコート上で苦しむチームメイトを鼓舞しつづけた。たとえ選手としてはバックアップ組に回ったとしても、キャプテンとしての責務は果たさなければいけない。そう考えたからである。

 責務の全うはコート上に留まらない。宿舎でも彼は工夫を凝らした。
「宿舎でも、密になるので通常のミーティングがなかなかできないんです。なので大広間を借りて、距離を取りながら、チームとしてどう臨んでいくか、細かくミーティングできたことがこの優勝につながったのかなと思います」
 それだけではない。
 朝食をとるとき、通常であれば「いただきます」と声を掛けて食べるのだが、今年は浅原の提案で「粘り!」という言葉が加わったという。「粘り!」「いただきます」。そのかけ声こそが、準々決勝の福岡第一 (九州ブロック推薦 / 福岡)、準決勝の北陸 (福井)、そして決勝の東山を最後の最後で捕らえ、逆転勝利につながる要因となったのである。

 そんな浅原を佐藤コーチはこう評価している。
「彼は 3 年生のなかにあって、はっきりと言葉で伝えることができるんです。歴代のキャプテンの中でもよくまとめてくれました。彼のそういう功績が選手たちのまとまりと、粘って諦めないで行くぞ、というところにつながったのだと思います」
 今大会の仙台大学附属明成は 4 試合戦い、そのうち浅原がコートに立ったのは60分に満たない。1 試合平均だと15分弱。決勝戦に関していえば 5 分47秒しかコートに立っていない。

 それでも浅原は最後まで仙台大学附属明成のキャプテンだった。
 佐藤コーチは最後にこう言っている。
「浅原あっての今年のチームでしたね」
 最大の賛辞である。

【大会男子ベストファイブ】
越田 大翔 (仙台大学附属明成 #7)
山﨑 一渉 (仙台大学附属明成 #8)
山内 ジャヘル琉人 (仙台大学附属明成 #10)
ムトンボ ジャン ピエール (東山 #9)
米須 玲音 (東山 #11)

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