ウインターカップ2020 第73回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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REPORT 現地レポート

【現地レポート⑭】苦しみ抜いた延岡学園が得た財産

2020年12月25日

完敗である。ファイナルスコアは90-120。しかしそれ以上に第1Qの得点が19、失点が41。後半に入ってようやくゲームにアジャストできてきたが、やはり第1Qのビハインドが敗因になったと言わざるを得ない。

「SoftBank ウインターカップ2020 令和2年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子2回戦で、屈指の好カードと思われていた開志国際(新潟)と延岡学園(宮崎)の一戦は、思わぬ大差で延岡学園が敗れる結果となった。

ゲームキャプテンで、チームの司令塔でもある木下岳人は敗因のひとつとして、開志国際が2戦目であることに対し、自分たちは思わぬ形で初戦が不戦勝になったことを挙げる。そのため東京体育館の雰囲気に飲まれてしまったのだと。
むろん非公式ではあるが、実際のゲーム時間に東京体育館のコートで練習することはできた。しかし同じ東京体育館でも練習と試合とでは異なる。
「昨日の練習では自分たちだけがコートに立って、リラックスした状態で練習できたんですけど、いざ試合となると、やったことのないチームとの対戦ということもあって、みんな堅くなってしまいました」

チームを率いる楠元龍水コーチは木下のそうした思いを認めた上で、こう話す。
「ウチが1試合目で、開志国際さんは2試合目……それは変えられないことです。生徒たちにも『強いチームは勝つ。1試合目だろうが、何試合目だろうが、強いチームが勝つんだよ』って言い聞かせてきました。私としてはそこへの不安よりも、自分たちのやるべきことをやろうと言って、それなりの練習をしてきました。でも、何なのかなぁ……想定していた以上に、緊張も含めて、飲まれてしまったところがあります」
映像を見て、さまざまなシチュエーションを想定してきた。しかし実際の開志国際は映像上の彼らとは違っていた。スケールが違ったと、楠元コーチは表現している。そのスケール違いに選手のみならず、楠元コーチさえ戸惑った。それが敗因のひとつになったというわけである。

敗れはしたが、木下をはじめ延岡学園の選手たちは最後まで声を掛け合い続けた。
「3年生最後の大会ということで、楽しくバスケをやろうと先生からも言われていました。今日の試合でも点差に関係なく、楽しくやろうとベンチで話していたし、プレーでもゲームキャプテンとして最後まで引っ張ろうという思いでプレーしていました」
そうした選手たちの姿に触れ、楠元コーチは3年生の頑張りを改めて評価する。
「彼らは1年生のときに不祥事があって、留学生の仲間がいなくなり、実は同級生も転校しているんです。そういう苦しみを抱えたなかでの今年のコロナ禍。『なんで俺らはこんなにもツイていないんだろう?』って思ってもおかしくないくらい、本当に苦しいことが、他のチーム以上にあった3年間なんです。それでも彼らはチームのことを最優先して練習やいろんなことを頑張ってくれました。こういう結果に終わりましたけど、彼ら3年生は延岡学園が次のレベルに行くための財産を、成功したことも、失敗したことも含めて、残してくれたと思います」

苦しみの先に輝くものがあれば、あるいは救われたのかもしれない。しかし彼らには苦しみの先にさえ悔しい結果が待っていた。ただ、楠元コーチが言うように、彼らが過ごした苦悩の日々は延岡学園の未来につながる。もちろん彼ら自身の未来にも――

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