ウインターカップ2020 第73回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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REPORT 現地レポート

【現地レポート⑮】エースの意地を見せた美しい散り際

2020年12月26日

 美しい散り際だった。

「SoftBank ウインターカップ2020 令和2年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子準々決勝。京都精華学園(京都)が絶対女王・桜花学園(愛知)に挑んだ一戦は、力の差をまざまざと見せ付けた桜花学園が97対55で京都精華を下し、準決勝進出を決めた。

 この試合は京都精華の選手たちにとって、待ち焦がれた一戦だった。

「桜花学園とは入学してから一度も対戦したことがなくて、ずっと対戦したいと思っていたんです」

 大会前にそう笑顔で答えてくれたのは京都精華のキャプテン#4荻田美だ。昨年は夏冬ともに岐阜女子(岐阜)に敗れ、桜花学園との対戦は目の前でついえていた。しかし、今年は順当に勝ちあげれば準々決勝で対決できるドローだったことから、選手たちも『まずは何としても桜花学園と戦えるところまでは勝ち上がるんだ』という強い思いがあった。

 それが2回戦の浜松開誠館(静岡)と3回戦の開志国際(新潟)を激闘の末に破る上で大きな力となったはずだ。

 やっとの思いでつかんだ桜花学園への挑戦権。試合は開始早々0-12のスタートダッシュを許し、一時は2点差まで迫ったものの、前半で24-48、第3クォーター終了時には41-74まで点差を広げられてしまった。

 それでも「桜花さん相手にここまでできたというところでは、満足はしてないけど、悔しいという思いはないです」と荻田は晴れやかな表情で答えていた。荻田自身、この試合ではチームで奪った55得点中26得点を自らの手で稼ぎ出した。目標としてきた相手に対して、100%ではないにしても自分のパフォーマンスを見せられたこと、チームとして困難な一年を乗り越えてここまで勝ち進めたことが、敗れてもなお彼女に満足感を与えたのだろう。

 山本綱義コーチは今大会を迎えるにあたってこんなことを言っていた。

「昨年は3位まで行って感動のあまり涙を流してしまいました。今年はコロナの影響などで思うような1年を過ごせなかった分、どこで終わったとしても笑顔で終わりたい」

 荻田をはじめ、選手たちの表情は晴れやかだった。「新チームが始まって以来、限られた時間の中でやれるだけのことをやってきて、念願だった桜花との対戦することもできましたので、子どもたちには満足感があったのかなと思います」と山本コーチ。

 荻田自身も1年生の頃から選手として、リーダーとして大きく成長してきた。去年のキャプテン高橋未来(デンソー アイリス)のような強烈なキャプテンシーは彼女にはなかったかもしれない。しかし、彼女には周りを気遣う優しさというリーダーシップがあった。

 取材の最後に「今日の試合はやり切れましたか?」と質問すると、荻田は「やることはやったと思います」と力強く答えてくれた。

 強敵を前にエースとしての意地を見せ、キャプテンとして困難な1年を過ごした荻田。彼女の顔は最後まで晴れやかだったが、その目から一筋の涙がこぼれ落ちた。

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