ウインターカップ2020 第73回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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【現地レポート㉑】中川泰志、不本意な冬を乗り越えて

2020年12月27日

 1 分13秒。
 このプレータイムは中川泰志 (東山 / 京都)にとって、不本意極まりないものだった。

「SoftBank ウインターカップ2020 令和 2 年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」。東山と報徳学園 (兵庫) による男子準々決勝は、後半に試合をひっくり返した東山が報徳学園を92対74で退け、準決勝進出を決めた。

 再びベスト 4 の舞台に戻ってこられたことに対して、中川には特別な思いがあるはずだ。前述した 1 分13秒という数字は、昨年のウインターカップ準決勝・福岡第一 (福岡) 戦での中川のプレータイムだ。昨年の大会直前に足首を負傷した中川は、1 回戦から騙し騙しプレーすることが精一杯。その姿を見た大澤徹也コーチは大会中に急成長した西部秀馬にプレータイムを与えた。

 後輩にプレータイムを取られたことが悔しいのではない。ケガでチームに貢献できず、勝つチャンスがあった福岡第一戦に敗れたことが中川にとっては一番悔しかった。「去年もスタートで出ていたのに、大会直前にケガをしてチームにも先輩にも迷惑をかけてしまいました。試合の前の日に (松野) 圭恭さんから電話が来て『今年は頼むぞ』というようなことを言われました。去年の先輩たちの思いも背負ってやらなきゃいけないと思いましたし、ここまで勝ち進むことができたので、去年の借りを返すという意味でも絶対に優勝したいです」と中川。

 苦しい経験をしたからこそ、懸ける思いは人一倍強い。

 試合は東山の大黒柱 #9 ムトンボ・ジャン・ピエールが試合開始からわずか 8 分あまりの間で 3 つのファウルを犯し、ベンチに下がらざるを得なくなってしまう。#10 コンゴロー・デイビッド擁する報徳学園にとってはビッグチャンスだ。インサイドを制圧したデイビッドは前半だけで26得点、16リバウンドを記録し、流れは報徳学園に傾く。

 しかし、前半で東山はその差を 2 点に留めたのだ。

 前半の主役は間違いなく中川だった。3 回戦までなかなか決まっていなかった外角のシュートが冴えわたり、ピエール不在のインサイドでもリバウンドで奮闘。前半で 3 ポイントシュート 3 本を含む15得点を稼ぎ出した。「ジャンピ (ピエール) がいなくなって、『ここでやらなきゃダメだ』って思ってプレーしていました。自分のスタッツなんてどうでもいいからチームを勝たせるために、気持ちで戦ったことがあのプレーに表れたんだと思います」と中川。

 この大活躍には大澤コーチも「今日は泰志が頑張った、本当に。落ち着いているように見えましたし、行くところ行かないところを判断していてリバウンドもハードにやっていたと思います。今日は良い意味で泰志らしくないというか (笑)。大会ごとに成長していると感じています」と、ベタ褒め。

 悔しさを胸に 1 年間戦ってきた中川の努力は最後の冬でしっかりと身を結んでいる。「この子たちも私も 1 日 1 日、試合が楽しいんです。それを (決勝戦の) 29日までやろうというのを、この大会のテーマにしている」と大澤コーチ。

 次は昨年超えられなかった準決勝、相手は京都府予選で敗れた洛南だ。東山にとって、そして中川にとって、2 つのリベンジを果たすための戦いが始まる。

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