ウインターカップ2020 第73回 全国高等学校バスケットボール選手権大会


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REPORT 現地レポート

【現地レポート⑤】最後まで貫いた「必勝不敗」の精神

2020年12月23日

 72-77――これが “最後” のスコアである。
「SoftBank ウインターカップ2020 令和 2 年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子 1 回戦、県立能代工業 (秋田) が九州学院 (熊本) に敗れた。そのスコアが72-77である。

“最後”と強調したのには意味がある。
 全国制覇58回、ウインターカップだけでも (前身の春の選抜大会も含めて) 20回の優勝を誇る名門は来春、近隣の高校と合併し、校名が「県立能代科学技術」に変わる。つまり今大会が「県立能代工業」としての “最後” の全国大会だったわけである。
「自分たちとしてはそれをプレッシャーに感じていないつもりだったんですけど、それでも重荷になっていたところが少しあったのかなって思います」
 試合後、キャプテンの中山玄己はそう語った。

 試合は能代工が抜け出し、九州学院が追い上げる。それをまた能代工が押し返し、九州学院が追う。そんな展開だった。苦しくなると中山が 3 ポイントシュートで押し返していたのだが、それも最後は力尽き、九州学院に押し切られてしまう。
「前半から自分たちが離して、追い上げられてという展開でしが、その追い上げられたのは自分たちのミスで、自分たちが崩した形です。後半は『自分たちで崩すのはやめよう』と話したのですが、意思疎通がとれていなくて、こういう結果になってしまいました」

 同校のOBであり、現コーチの小野秀二が言葉を継ぐ。
「これが力です。僕らコーチ陣も彼らにいつも言っているし、僕ら自身も現役時代によく言われたんですけど、コートで出ているのが力です。そういう意味では、本来、もっといけるところでミスが出て、流れを持って行かれる。そういうゲーム展開が今年はずっと続いていたので、それが最後まで改善できませんでした」

 それでも能代工は最後まで諦めなかった。3 点差に詰め寄ったときの九州学院のタイムアウトを小野コーチはこう振り返っている。
「何でもそうですけど、諦めたらすべてが終わる。我々はそういうところでひっくり返す練習をしてきていますので、『それを信じて、やれ』と選手たちには伝えました」
 それに呼応するかのように中山もコートに入ったとき、チームメイトにこう伝えたという。
「まだ諦めるな。まだ 3 点差だから追いつける。ここからだから、しっかりプレーしろ」
 結果的には追いつけなかった。しかし彼らは最後まで「能代工」であろうとした。「必勝不敗」の精神を貫こうとした。

全国の高校バスケットボールシーンからその名前は消える。しかし歴史を紡ぎ、伝統を重ねた同校の精神は消えない。秋田県立能代工業高等学校バスケットボール部――高校バスケット界に名を轟かせた名門が、静かにその名に幕を下ろした。

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